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取引経過を推定計算する

消費者金融業者は取引経過を開示しなければならないのですが、過払い金の返還を逃れたいが為に開示を拒否するケースも稀にあります。「10年以上前の取引経過は破棄した」「自動的に消去される」「これ以上は見当たらない」など様々な理由を付けて取引経過の開示を拒否してきます。

訴訟をする場合でも、まず過払い金の請求金額を確定しなければなりません。そこで弁護士は取引経過を開示しない悪質な業者への対抗策として「推定計算」をすることになります。

推定計算とは借りて自身の記憶、手元に残っている契約書、ATM明細書、銀行の預金通帳、振込明細などに基づいて取引経過を再現して、過払い金の残高を算出しようとするものです。一部分開示されていた取引経過や、同じ時期に借入れをしていた他の業者との取引経過も参考にして再現します。

推定計算は訴訟の場面で威力を発揮します。業者が最後まで取引経過を開示しない場合、弁護士が作った推定計算が真実とみなされて判決が下ることがあるからです。

推定計算はこのように効果のある手法なのですが、借り手本人が行うにはハイレベルな方法ですから、推定計算に基づく計算した金額で過払い金の請求をするのであれば、弁護士に依頼される方が適切です。

推定計算の方法

実際に弁護士がやっている推定計算の方法を説明していきます。まず一番最初に借り入れた契約書があればそれを参考にして、通帳への記載、ATM明細書、領収書などがあれば、それらを参考に取引経過を組み立てていきます。途中で借り換えた時に作った契約書があれば、借り換え前の残債務などが書いてあることもありますので、これも参考にします。

一番最初に借入れた契約書が無ければ、借入れを始めた時期を思い出さなければなりません。そのために借入れの順序や生活歴や重大事件を参考に借り入れた時期を特定します。

限度額が広がった時期についても同じ方法で再現します。同じ時期に他の消費者金融業者の借り入れがある場合や、A社で借増ししてB社に払ったなどといった場合には、他の業者の取引経過などが参考になります。

業者から借り入れを始めてから、生活費が足りなくなったり、どこからも借り入れができなくなるまでの間は、返済期日に遅れずに、約束の返済額を毎月きちんと返済していたはずです。 したがって、毎月の返済日については、毎月の返済期日と同じとしても大きな違いはないでしょう。また毎月の返済額は、借り入れ残高に応じて均等額です。業者に電話して、借入残高を言えば、最低弁済額を教えてくれます。1枚でもATMの伝票や振込明細が残っていれば、その前後の返済額の参考になるはずです。

借入限度額ギリギリで頻繁に借入れと返済を繰り返している場合には、推定計算も大変です。返済してすぐに小口の借入れをしている場合、借り入れた金額の細かい数字までは覚えていないことがほとんどでしょう。 この場合は一部開示された取引経過のうち、古い方から2年間程度の借入金額、借入年月日、手持ち資料を参考にして入力します。借入の回数や毎回の借入金額には、それほどの差はないはずです。

推定計算の計算書が出来上がったら、利率の欄に約定金利を入力してみましょう。取引の途中でほとんど過払い金のマイナスが発生せず、途中の借換えで残高がゼロ近くになり、最終の残高が開示された取引経過の残高と同じであれば 、その計算書は大きく間違っていないということになります。

初めて借入れをした時期が古くても、途中で完済したために一時期、業者との取引が中断して、その後新たに借入を借入をしている場合があります。途中完済があった場合には、完済した年月日などの確定が必要です。 しかし、そこまでの記憶は残っていないのが通常でしょう。せめて、途中完済して空白になっていた期間が数ヶ月程度か半年を超えるのか、数年なるのかを思い出して、取引経過を再現するとよいでしょう。

勿論正確に取引経過を再現できれば、それに越したことはありません。しかし、10年以上前の取引について個々の返済や借入れを正確に記憶することなど、常識的に考えて無理な話でしょう。そもそも、取引経過を借り手側の記憶に頼って再現しなければならない理由は、消費者金融業者が取引経過を開示する義務を負いながら法に反して開示しないことにあるのです。

取引経過を再現し、過払い金の残高を計算するに際して、取引開始日の数ヶ月程度のズレや返済日のズレ、返済金額の誤りは許容される範囲です。ときに業者は推定計算に対して「架空請求まがい」と批判したり訴訟をするにあたっても「訴訟詐欺」とも言います。

しかし金額の多い少ないは別として過払い金が存在していることは間違いありません。従って業者の批判は当たっていません。取引経過が事実と異なって過払い金が多額になる場合は、業者はそこを指摘し反論するでしょうし、逆に過払い金が少な目に計算されていれば、業者は何も指摘せずに支払ってくる可能性もあります。業者に指摘された事実が正しければ、それを素直に受け入れて取引経過を訂正し、再度引直計算をして請求金額を訂正すればいいだけです。

このように推定計算を行い引直計算した過払い金の金額は、正確なものではありません。したがって消費者金融業者の抵抗も強く、裁判前の話し合いによる交渉で金額がまとまる可能性はあまり高くありません。推定計算で訴訟を起こして、裁判と平行して和解交渉を行う方法は有効ではありますが、推定計算で訴訟することは弁護士に依頼しないと無理な部分が多くあります。

もし取引経過の入手が困難であり、推定計算で過払い金のおおよその額が確定できたなら、弁護士に回収を依頼した方がよいでしょう。

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