自己破産や個人再生をするときに退職金の一部が財産の価値として評価されることに違和感を感じる人が少なくありません。退職金というのは退職をしないと今手元にはないわけですが、将来辞めたりだとか今もし仕事を辞めたりというときには退職金が本来あるはずです。そのようなものは積み立てられた財産と同じようなものとして、破産や再生をした時には精算されるべきなのではないか?という考え方があります。所が今すぐ手に入るわけではないので、かなり割引いて対応することになります。例えば退職金、今辞めれば800万円の退職金が出るという算定の時には、これを1/8に評価します。つまり100万円が現在の価値であるということで、仕事を辞めていない状態で全額は難しいので今の価値は1/8ということで運用されています。
債務整理を行おうとしている人に100万円即金は無理
ただしこの100万円に関して、自己破産をするときには、この財産というのは本来お金に換えて債権者に分配するという手続きが必要ですので、仕事を辞める必要はないですし、退職金を今辞めて受け取るという必要はないのですが、この1/8の100万円を何らかの形で準備して債権者に分配をするということが必要になってきます。破産免責により借金全額の返済義務を無くす代わりに、資産扱いになる退職金の1/8を債権者に即分配しなければならないわけです。毎月の返済に苦しんでいて、毎月あと数万円の確保が難しいからこそ自己破産をしようとしている人に、即金で100万円用意して債権者に分配という流れは不自然です。このため、借金全額を破産免責によりどうにかしたいと考えた時には、会社を退職して退職金で債務返済を行うか、即座には払わなくて済む個人再生に頼ることになるわけです。
個人再生なら退職金の1/8は分割払い出来る
ただこれに対して個人再生手続きの場合には、財産の処分は必ずしも必要がない制度となっています。生命保険や預貯金に関しても自己破産の時には一定の額を処分をされますが、個人再生の場合はされません。処分はされないものの、財産の価値としてみなされるので、その分支払額が増えたりするケースはあります。 個人再生の場合も退職金100万円に関しては退職しなくてもすみますけれども、100万円が財産の価値として評価されますので、他の財産プラス100万円、これが債権者への支払額になります。ただ債権者への返済額になるだけですので、将来的には分割して支払えばよいということになります。分割の期間は個人再生の場合は、原則3年間、特別な事情があれば5年間ということで、退職金が800万ある場合は1/8の100万円を将来に渡って分割をし続けるということで借金を圧縮することができます。このように退職金のように今すぐお金が準備できないということで自己破産の手続きが取れない場合でも、個人再生手続きならば払って行けることから、積極的に個人再生手続きが使われています。
住宅ローン特則を使わないなら個人再生を選ぶ理由は少ない
債務整理を行う上で、弁護士費用は自己破産よりも個人再生手続きの方が高く、返済額も自己破産ならば破産免責決定でゼロになります。しかし、個人再生ならば退職金が高額になりやすい中高年の債務整理であっても適用しやすいからこそ、若年世代よりも中高年世代の方がはるかに個人再生を使いやすいわけです。なぜなら、退職金や生命保険の解約返戻金は、勤続年数や保険を掛けている年数が多いほど多額になるからです。20代・30代ならば退職金の額が少ないために、自己破産を行った時に破産管財事件に発展するケースが少なくなります。20万円以上の資産を持つと考えられる場合に、破産管財事件となるのでそもそも退職金が存在しない派遣社員や契約社員ならば、自己破産を選んでも問題ありません。
住宅ローン特則を使わない状況ならば、最大1/5に圧縮可能とされる個人再生よりも、債務返済義務をゼロにしてしまう自己破産が遥かに有利なことが分かります。しかし、自己破産は破産管財事件となった場合に予納金額が膨れ上がってしまうケースがあるので、残念ながら初期費用を用意出来ずに諦めるケースが少なくありません。自己破産を行う時点で退職金予定支給額計算書を総務経由で経理に出してもらう必要があるので、少なくとも退職金が高額になる場合には何らかの理由を付けて勤務先へ退職金予定支給額計算書を出してもらわなければなりません。既に住宅ローンを組んでいる場合には、債務整理以外に退職金予定支給額計算書は必要とされないので債務整理を話す必要があります。しかし、住宅ローンをまだ組んでいない場合には、必要な書類だと試算だけしてもらうことが可能です。退職金の予定額が高額ならば個人再生を選択し、少なければ自己破産を選択する方法が一般的です。また、転職をする予定ならば先に退職を済ませて退職金を使って借金返済を行ってしまう方法があります。
住宅ローン特則有りなら個人再生手続きしかない
個人再生を行う際には、住宅ローン特則を使う予定なら個人再生手続きしか債務整理方法は残されていません。任意整理を検討しても、返済額がさほど減らない状況ならば、住宅ローンがある以上は自己破産を選択出来ません。個人再生手続きを行う上で、退職金予定支給額計算書の入手だけが難関と考えられます。実家のリフォーム代金のためといった理由を探すことが出来れば、住宅ローン特則有りの個人再生手続きを行えるでしょう。
大手の大企業に勤務している場合には、退職金予定支給額が多くなりすぎるので、個人再生を行った際に債務圧縮率が低くなってしまう可能性があります。最低弁済額よりも遥かに大きな資産がある場合には、個人再生手続きを行った結果として債務額をどこまで圧縮出来るのか冷静な判断が必要です。また、住宅ローン以外の債務額がさほど大きく無い場合には、稀に清算価値が債務総額を上回ってしまうことがあります。この場合には、既に個人再生を行うメリットは、住宅ローンの再スケジュールしか無いので、一般債務は任意整理を5年間の返済にて将来利息カットという方向で話を進めても同じです。金融機関が担当する住宅ローンの再スケジュールを行うために個人再生手続きが必要という判断が行われた時には、個人再生を検討することになるでしょう。
退職金が個人再生手続きに及ぼす影響は意外と大きい
勤続年数が長い人ほど退職金予定支給額が大きくなるので、普段は縁がないと思われる退職金について調べる良い機会になるでしょう。会社内でリストラが検討されている時期ならば、早期退職制度を考慮して準備期間があればという理由を付けて、退職金予定支給額計算書の入手に成功すれば個人再生を行いやすいです。1/8という算定額は、あくまでも見込みであって必ず貰えるとは限らない金額だからこそ、個人再生手続きを行った後で転職やキャリアアップを視野に入れた行動に移る人も出てきます。