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個人事業主の任意整理と自己破産は今後の生活基盤確保を優先して決定する


個人企業を営んでいる者はその配偶者及び子供らも家業を手伝っている場合が多く、その事業が相談者の家族の生活基盤になっています。このため、まずは現在手掛けている事業により今後利益を上げて生計を立てていけるかどうかを検討する必要があります。利益が出ているのであれば、その利益から生活費等を除いた額を債務弁済原資として任意整理することができるでしょう。

一方、事業利益が出ていなければ、利益が出る取引だけに絞る縮小均衡を実践するなどして改善を図る必要があります。今までは人間関係のしがらみから利益が出なくても請負を続けていたならば、思い切って手を引くしかありません。どうしても一部の取引だけを停止出来ないならば、いっそのこと自己破産して新たな職に就くことが適当だと考えられます。

個人企業の規模が小さく費用をかけたくない、あるいはかける余裕もないとか、保証人との関係に配慮したいなど、柔軟な解決を図りたいときは自己破産ではなく任意整理という選択肢があります。しかし、自己破産とは異なり任意整理では借金減額効果が少ないので、利息制限法に基づき引き直した額から更に減額を求めることは難しいでしょう。

個人事業主が債務整理を行うために考えなければならないポイント

①不動産について

不要な不動産がある場合でも債務整理の相談に訪れる個人事業主が持つ不動産には、抵当権を設定していることが多いです。差押処理により競売されると市場価格より安くなることが多いので、債権者への配当額を多くするために任意での売却を行います。任意売却については、差押が行われる前ならば比較的自由に行なえますが、抵当権を抜けるかどうかが価格に反映することになるので、事前に債権者の了承を得ておくと間違いありません。

買主の募集に関しては不動産仲介業者に依頼することが合理的です。売却できた場合にのみ仲介手数料を払う内容の契約を締結します。債務整理を弁護士に依頼する前に、抵当権付きの不動産を売却して清算する行為自体は、いずれにしても差押されることが分かっているなら、なるべく高値で売却して他の返済に余ったお金を充てることが出来れば有効です。

②自動車について

任意整理後の生計をたてるために必要なら残します。業務用車両であれば売ってもたいした額にはなりません。自動車を所有し続ける限り自動車税や自賠責保険料等の維持費がかかるため、必要性が低いのであれば手放した方が適当な場合が多いです。譲渡する場合には、登録名義移転費用等を要します。廃車にする場合でも廃車登録費用等を要します。登録が移転されないと自動車税を請求され続けるため、所有者名義の変更手続きを経た上で鍵を引き渡す方が安全です。

毎年4/1時点で登録されている所有者に対して自動車税の払込用紙が送られて来るので、なるべく年度末迄に売却しておくだけで、翌年度の自動車税を余計に支払わずに済むでしょう。個人事業主を行っていて、業務用車両として使い続けるためには、目安として中古車の査定額が20万円未満ならば、自己破産を行ってもそのまま乗り続けることが出来る可能性があります。なぜなら、20万円以上の資産のみが、自己破産時に選任される破産管財人により没収されて競売処理されるからです。

③什器備品・動産・有価証券について

その後の事業に必要な物は残します。不要な物は売却したり廃棄します。高額になることはあまりないですが廃棄費用をかけるよりは安くとも買い取り業者に売却しましょう。不動産売却にあたって什器備品をあわせてあるいは廃棄してもらう約束で売却してもよいです。ゴルフ会員権などの有価証券も買い取る業者がいるのでそのような業者に売却することを検討しましょう。購入時の価格を覚えてる人ほど、売却に対して勿体無いという考え方をしがちですが、1ヶ月後に利益をいくら生んでいる物なのか考えた上で必要・不要を判断すると良いです。

④生命保険について

年齢や健康状態、解約返戻金額を考慮して解約するか否かを判断します。解約した場合に得られる解約返戻金は相当長期間の積立がなされてない限り数十万円程度であることが多く、これを債権者に返済してもごく僅かであるため、債権者が生命保険の解約返戻金にこだわることは少ないです。

⑤売掛金について

債務整理の相談をする事業主は、いわゆる自転車操業になっていますので売掛金の入金が止まると破綻する事がほとんどです。従って、売掛金については債務整理後同様に支払いを続けてもらう必要があります。ところが小規模な高利貸しやヤミ金業者は債務者の大口の取引先に対する売掛金を債権譲渡させて担保に取っていることがあります。具体的には、債権譲渡された売掛金売却だけではなく売掛金を供託された場合に備えて、供託金還付請求の為の委任状や印鑑証明書交付のための委任状、その他白紙委任状などを多くの債務者から交付させています。このような場合には、債権譲受人に売掛金を回収されないようにするため、債権を譲渡しても債権譲渡通知発送の委任を解除することを通知します。

また売掛金はこのような紛争に巻き込まれることや支払日経過後に生じる遅延損害金の支払いを嫌うため、債権者不確知による供託をすることがあります。ある程度規模の大きな会社の場合、供託する方が多いでしょう。供託された場合には債務者が供託金還付請求権を有する事を確認する訴訟を提起してその確定判決をもって供託金の還付を受ける必要があります。ヤミ金業者は欠席することがほとんどであるため、裁判は第一回口頭弁論期日に出廷するだけで結審します。

売掛金を取り込んで供託すると同時に還付請求を行うヤミ金業者に対しては、ヤミ金業者より先に売掛先の協力を取り付けるべく売掛先に早急に連絡して 売掛金の支払日が到達する前に上申書を提出する必要があります。この上申書を提出すると新たに登録した印鑑によってでないと供託金の還付を受けられなくなるため、ヤミ金業者は債務者から得た供託金還付請求の ための委任状及び印鑑証明書によって供託金を得ることができなくなります。

個人事業主が債務整理を行うためには状況分析が必要になる

給与所得者とは異なり、個人事業主は数多くの債権者との交渉を行いながら営業を続けていることが多く、債権者と対峙する時間が長くなりがちです。債務整理の手段として、自己破産を選択出来るかどうかは、どれくらい綺麗な資金繰りを行っていたかで決まります。なぜなら、自己破産を行うためには、破産法で定められた免責不許可事由に該当しているお金の使い方・借り方をしていないことが前提となるので、ヤミ金融からの借入があるだけで免責不許可事由に該当してしまうからです。借金理由を問わない個人再生手続きならば、過半数の債権者から消極的賛成を得ることが出来るだけで、再生計画案の認可を受けやすくなります。

個人事業主が自己破産申し立てを行うと、20万円以上の資産扱いとなる仕事上必要な道具が該当してしまうケースがあるので、少額管財事件として処理が行われることになります。既に廃業を行うつもりならば話が楽ですが、事業を縮小均衡させつつ自己破産を行うためには、時間と費用がそれなりに掛かることを知っておかなければなりません。具体的には、個人事業主で事業を継続しつつ自己破産する場合には、少額管財事件として破産管財人報酬に充てるため、予納金が20万円程度必要になります。また、破産管財人に毎月の売上を始めとする詳細な入出金記録を開示する必要があり、事業継続に必要な資産に該当する機材代金についても毎月分割払いという形で破産管財人へ納金する必要があるわけです。分割払いを行う金額の合計額が2年以上かかる場合には、裁判所側で資産扱いの保証金を引き下げてくれることもあります。

ヤミ金融からの借入があるために、自己破産申し立てが出来ないならば、小規模個人再生という手段が適しています。債権者による決議が必要になるものの、借金総額を圧縮出来るので事業継続を前提とするなら適した方法と考えられます。任意整理では総債務の返済が困難な場合であっても、個人再生ならば3年間で一気に解決可能です。利益が出ている事業のみ継続させて立ち直るならば、小規模個人再生も有望な選択肢となるでしょう。

任意整理で様子見して個人再生と自己破産で勝負する

債務整理に着手する際に、個人事業主として生計をこれからも立てるなら、今後の生活面まで含めた全面的な改善が必要になります。弁護士へじっくり相談しながら、任意整理から始めて債務調査をしっかり行った上で、今後の方針として個人再生と自己破産のどちらで債務整理を行うのか決めると良いです。なぜなら、任意整理のみでは借金元金の圧縮は出来ないので、事業を取捨選択して利益が出続けるものだけ残して他の事業は廃止する必要があります。

債務整理を行う際に、事業整理を行えば必ず処分品が出てくるので弁護士と相談しつつ売却して任意整理を行い、どうしても借金返済目処が立たなければ個人再生と自己破産のどちらかで一度清算を行うと良いです。事業資産がある場合には、自己破産を行うために予納金や弁済金として多額の費用がかかることも多いので、並行して個人再生も検討しつつ弁護士とじっくり話して決める必要があります。



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