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一部免責とは?どのような問題があって運用されなくなったのか


一部免責とは?

一部免責とは、自己破産と同時に申し立てを行う破産免責において、全ての債務に対して返済免除を行うわけではなく債務の一部のみを免責とする運用のことを指します。破産法で規定された個人の自己破産については、破産法第252条に定められた免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判官による裁量免責という制度が行われています。債権者一覧表に掲載された全債務のうち一定の金額を積み立てることを条件として一部免責を与え、債権者に分配することを約束することで破産免責を認められる仕組みです。

しかし、裁判所に対して申し立てる破産免責については、単純に免責許可と不許可を判断する場合と比較して、偏頗弁済を認めてしまう原因となりかねないために近年では一部免責決定は出なくなりました。実際に東京地方裁判所では平成8年以降、大阪地方裁判所では平成6年以降の自己破産申し立てにおいて、破産免責に関する一部免責決定が出されていない状況です。

一部免責の規定が破産法に存在しない

自己破産を行う際に一部免責を視野に入れた申し立てを行うと、破産免責不許可事由に該当している借金理由であっても一部免責という形で返済義務の免除を期待出来ます。しかし、最初から破産免責決定を得るための申し立て内容とは変わってしまうため、必ずしも債務者にとって有利とはなりません。また、一部免責の規定そのものが破産法に存在しないことから、日本全国全ての裁判所で運用されている方法では無いという点が問題になります。

なぜなら、特定の裁判所のみ裁量免責の延長として一部免責を行ってしまうと、該当する地方裁判所の事情に詳しい弁護士に依頼しない限り一部免責という決定を受けられないことになり債務者にとって不公平になるからです。債権者としても破産免責不許可事由に該当しているにも関わらず一部免責という決定には納得出来ず、債権者集会にて厳しい質問が増えてしまう原因となりかねません。

債権者から債務者へ一部免責を狙うように圧力が掛かりやすい

債権者から債務者へ自己破産申し立てを行う際に一部免責を狙うように圧力をかけやすい状態になることが、過去に一部免責を行った時期に指摘されています。自己破産申し立てを行う前には、債務調査段階で弁護士または司法書士に委任することで受任通知が債権者に発送されます。

債務総額は、個人信用情報機関へ債権者が金融業者ならば信用情報照会を行うことですぐに確認可能です。自己破産申し立てを行いそうだと債権者が判断出来る状態ならば、一部免責制度が運用されている地方裁判所では破産免責決定を出されてしまうと1円も回収出来ない可能性が出てしまいます。そこで、一部免責決定を狙わないかと債務者へ圧力をかけて債務整理方法について債権者の介入を許してしまうこととなりかねません。

債権者平等の原則を守ることが難しくなる

自己破産において一部免責を認めてしまうと、免責対象となる債権と免責不許可となる債権が発生するという事態に陥ります。担保権付きの債権といった優先弁済が認められている例外的な場合を除き、一般債権については一部の債権者が不利益とならないように債権者平等の原則が守られなければなりません。裁判所が明文化されていない一部免責を行ってしまうと、債権者は従わざるを得ない状況に陥るものの、一部免責が行われるリスクを考えて以後は審査が厳しくなるだけでなく金利が高止まりする原因となりかねないわけです。

金融業者は継続的に融資を事業として継続しているので、一部免責を認めることが一般国民の日常生活で借入を困難にする状況となることは避ける必要があります。そこで、裁判所では一部免責が行われることは無くなり、免責不許可事由が含まれる借金であっても少額管財事件として破産管財人を付けることにより債務者の素行次第で破産免責決定を裁量免責により認める運用に切り替わっています。




 

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