住宅資金特別条項とは?
住宅資金特別条項とは、個人再生手続きを行う際に民事再生法第196条以下に定められた住宅資金貸付債権に関する特則を指します。具体的には、個人再生を行う際に住宅ローンだけは再生債権から除外して払い続けることにより、持ち家を失わずに生活の再建を行うことが出来る制度です。持ち家を1度処分してしまうと、再度住宅ローンを組むことが事実上困難になり、賃貸物件へ入居した時のコストが高くなることから生活を再建するために法的債務整理を行う際の趣旨に反することになりかねません。
自己破産とは異なり、再生債権について3年間で分割払いを行うことから、一般債権者についても配当金を一定額受け取ることが出来ます。住宅資金特別条項を適用させることが出来れば、持ち家を維持しつつ圧縮した再生債権の返済を行って、新たな生活を始めることが出来る自己破産を防止することにも役立っている制度です。
住宅資金特別条項を適用するためには複数のパターンがある
個人再生手続きにおいて住宅資金特別条項を適用する際には、民事再生法第199条に定められた5種類のタイプのどれかを適用して住宅ローンを返済することになります。
①正常返済型
②期限の利益回復型
③再スケジュール型
④元本猶予期間併用型
⑤合意型
住宅ローンの契約内容を一切変更せずに、今までどおり住宅ローンを払い続けながら個人再生を行う方法です。個人再生手続きの中で最も多い方法となっていて、他の方法と比較しても弁護士が住宅ローンの契約先金融機関との交渉が少ないために、個人再生において負担が少ない方法となっています。個人再生は基本的に弁護士へ委任して行うことになりますが、本人申し立てを行うために書類作成のみ司法書士へ依頼する方法で個人再生が出来る唯一の方法となっています。
しかし、弁護士に委任せずに本人申し立てを行うと、事前に金融機関へ了承を取っておかなければ個人再生申し立て準備期間を短くしなければ、支払いを全て一旦止めるために期限の利益を喪失しかねません。
個人再生の返済計画を確実に行うためには再スケジュール型を活用する
個人再生手続きは、小規模個人再生ならば最大1/5まで再生債権を圧縮した上で、圧縮済み再生債権のみを3年間かけて分割払いします。住宅資金特別条項を申請して認めてもらえれば、住宅ローンのみ別枠として返済を完済まで続けることにより持ち家を失わずに済む制度です。圧縮された再生債権とはいえ、借金額が多額なほど3年間という返済期間で再生債権を完済することは必ずしも誰もが出来るとは限りません。
そこで、住宅ローンの返済スケジュールを金融機関と事前交渉の上で毎月の返済額を少なくすることで、返済不能に陥らない工夫を行うわけです。具体的には、返済期間を既存の契約よりも5年延ばして毎月の返済額を抑える方法や、転職に伴い賞与額が少ないならばボーナス払いを無しにして毎月の返済額のみとする方法などが採用されています。
元本猶予期間併用型なら再生計画案の履行を優先出来る
再生計画案を確実に履行出来る方法として、元本猶予期間併用型の住宅資金特別条項を申請出来れば望ましいです。再生債権を3年間で完済する期間だけは、住宅ローンを利息払いのみとして元金返済を行わなければ、毎月の返済額を大幅に減らすことが可能です。住宅ローンの契約先金融機関との交渉が困難であることと、住宅ローンの返済総額と返済期間が長くなってしまうので、定年退職年齢に到達しているリスクを考慮しなければなりません。それでも住宅ローンの完済を目指しつつ再生計画案の確実な履行を行うためには、適した方法だと考えられています。