検索の抗弁とは?
検索の抗弁権とは、債務の保証人となった者が債権者に対して主債務者の財産を先に強制執行するまで、保証債務の履行を拒否できる権利のことです。保証人となったからといって、本人から取り立て出来る債権については、先に本人から全額回収を試みるべきであって、強制執行を済ませてもなお債務が残っている時まで保証債務の履行をしないと主張出来ます。
債権の抗弁を主張した後に、主債務者が他の債権者から先に財産を回収されてしまった場合には、検索の抗弁を主張した金額を除いた分についてのみ保証債務を履行すれば良いです。債権者が保証債務の履行をなぜか主張してくる場合には、検索の抗弁により債権者の財産を聞き出す目的が隠されていることがあるので、主債務者にすぐ連絡して債務の弁済を促すことも必要です。
検索の抗弁を行使できる条件とは
民法第453条に定められた検索の抗弁権を行使するためには、主債務者から容易に差し押さえ可能な資産があることを保証人が債権者に対して証明しなければなりません。例えば、100万円の債務について保証債務履行を債権者から求められたとして、70万円の預金があることを保証人が債権者に対して預金口座がある銀行の支店名と共に証明すれば、その時点で先に70万円の預金を回収してから残りの30万円の保証債務を求めなければなりません。
もし70万円の預金を別の債権者に先を超されて差し押さえされてしまったとしても、検索の抗弁を主張した時点で預金があったことを証明しているので、債権者は債務全額ではなく検索の抗弁で証明した金額以外の30万円しか保証債務として保証人に請求出来ないわけです。検索の抗弁は、債務総額全てについてではなく一部の金額についてでも証明出来れば主張出来ることになっており、検索の抗弁を履行している間は保証債務の履行を行う必要がありません。
連帯保証人と保証人の違いを明確にしておこう
連帯保証人と保証人は、同じ「保証人」という言葉が付いているために一見すると同じに思えますが、実際には大きな違いがあります。連帯保証人は本人と同じ責任を負うことになるので、債権者は主債務者と連帯保証人のうちどちらからでも取り立て可能です。連帯保証人には検索の抗弁が無いので、主債務者から先に強制執行により回収することを主張出来ません。
一方、連帯という言葉がつかないただの保証人ならば、検索の抗弁を主張出来るだけでなく、保証人が複数いる場合には頭数で割った金額についてのみ保証債務を履行すれば良いことになっています。このため、主債務者の借金額が100万円に対して4人の保証人がいるならば、連帯保証人は100万円全額の保証債務履行義務があるものの保証人は頭数で割った25万円についてのみ履行債務を実行すれば良いわけです。日本学生支援機構が保証人に対して保証債務履行義務を超えた保証債務を求めていたことは、保証人の検索の抗弁と保証債務の履行義務範囲を保証人が知らなかった法律知識の無さに原因があります。
検索の抗弁を主張できないことがある
保証人ならば誰もが検索の抗弁を主張出来るわけではなく、債権者に対して検索の抗弁を主張出来ないことがあることを知っておかなければなりません。よくあるパターンとして、主債務者が行方不明になった場合と自己破産した場合が挙げられます。検索の抗弁は、あくまでも本人から容易に回収が出来ることを証明しなければならないので、主債務者が行方不明ならばそもそも検索の抗弁を主張出来ません。また、自己破産宣告を受けて破産免責決定を受けた場合には、主債務者は回収可能な資産を破産手続きで没収されており、検索の抗弁を主張出来る財産そのものが無いことになります。