債権調査と債務調査は、どちらの立場から見た時の借金かという意味で同じものを指します。主に債務整理を行う際に、代理人として委任された弁護士や司法書士が行うのは、債権者一覧表を作成するために債権者かどうかを確認して借金額を確定させる目的で行います。
債権調査とは?
債権調査とは、債権者が誰で正確にはいくらの債権を保有しているのか調べることを指します。債権調査は、債務整理に着手する際に必須の作業となり、債務整理を行う方法決定や交渉する債権者を確定するための作業です。債権調査には、債務整理を依頼された弁護士または認定司法書士が行う債権調査と、破産管財人または裁判所が行う債権調査の2種類が存在します。
本人から債務整理に着手した時に借金がどのくらいあるのか正確に把握しなければ、任意整理・個人再生・自己破産のうちどの方法で債務整理を行えば良いのか、弁護士であっても分かりません。依頼人が持つ債務情報は、貸金業者が誰かという部分については正確であっても、具体的な借金額については曖昧なことが多いです。中には既に借金返済義務が無くなっている消滅時効に掛かった債権が含まれているかもしれません。債務整理を行うためには、債権者と債権額の確定をさせることが最初の一歩となり、債権額を確定させる行為が債権調査です。
弁護士または認定司法書士が行う債権調査
弁護士または認定司法書士が本人から債務整理を受任すると、最初に本人から聞き取りを行った債権者全てに対して受任通知を発送します。債権者へ発送する受任通知には、債権届出調査票が添付されているので、債権者は自らが主張する債権額を申告するわけです。同時に貸金業者に対しては、受任した弁護士または認定司法書士が、全取引履歴開示請求を行い、2010年6月以前からの契約がある場合には、法定金利での金利引き直し計算を行って過払い金の有無をチェックします。
債務整理方法を最終的に決定するためには、債権者が誰で債権額が正確にいくらという金額までしっかり把握する債権調査を行わなければなりません。過払い金の有無を調べた上で、最終的に任意整理・個人再生・自己破産のうちどの債務整理方法を実行に移すか確認するわけです。債権調査を行う過程で、既に消滅時効にかかっている債権が見つかれば、時効援用を行うため債権者へ内容証明郵便を出します。中には債権者から既に債権は無いという連絡を受ける場合もあります。債権調査は、全ての債務整理を行う前提条件となる点で重要な作業です。
破産管財人または裁判所が行う債権調査
裁判所へ法的整理を申し立てる個人再生と自己破産では、裁判所が申し立て内容を判断するために債権調査を別途行います。個人再生の場合には、個人再生委員が届け出のある債権者一覧表の内容が正しいか債権調査を行いますが、自己破産ならば破産管財人が同じく債権調査を行うわけです。
裁判所が主導で行う債権調査は、債権者一覧表に未記載の債権者を発見するため、債権届出期間を周知した上で広く官報への掲載が行われることが多いので、債権者平等の原則に則った債務整理を行うために不可欠な調査となります。弁護士または司法書士が行う債権調査が本当に正しいのか確認する意味合いがあるので、うっかり債権者一覧表から漏れてしまっている債権者がいた場合には、すぐに対処しなければなりません。