所有権留保とは?
所有権留保とは、売買契約を結ぶ際の特約により売主が売買代金を確実に受取るため、分割払いされる売買代金が完済されるまで引き渡しを終えても所有権移転を留保することです。非典型担保の1つとされていて、クレジットカードで購入した商品や割賦販売で分割払いを行った商品に対して適用されます。最も身近で分かりやすいものは、車をローンで購入した際の車検証を確認すると、所有者にディーラーや信販会社名が入り使用者欄に本人の名前が入ります。
ローンを完済した時点で所有者欄の変更が出来るようになるので、ローン完済済みの自動車は、所有権欄を本人名義に変更する手続きをディーラーまたは信販会社から勧められるでしょう。このため、日常生活でも様々なシーンで所有権留保が行われており、商品の引き渡しを受けたからといって必ずしも所有権の移転が完了しているとは限らない点に注意が必要です。
クレジットカードによる商品購入は所有権留保に該当する
クレジットカードにより商品を購入すると、商品の引き渡しはすぐに店から受けられるものの実際の所有権は代金を完済するまで信販会社が持っています。所有権留保という状態となるために、信販会社の同意無しに転売することは出来ません。
クレジットカードのショッピング枠を購入商品を転売する形で現金化することが違法とされてしまうのは、所有権留保により信販会社に所有権がある商品を所有者の同意なく勝手に売却しているからです。同意があれば所有権留保状態でも売却可能ですが、クレジットカードの利用規約を見れば分かるように購入商品の転売は禁止されているので非現実的です。
割賦契約を組んだ場合には完済まで所有権留保状態となる
家電量販店だけでなく大きな買い物をする際に割賦契約を結んだ場合には、完済まで所有権が移転しないので所有権留保状態となります。実際に商品の引き渡しを受けていても代金を完済することなく長期延滞をすれば、所有権者により商品を引き上げられても文句が言えません。なぜなら、所有権留保は非典型担保とされているので、売買契約を解除した上で担保権を行使して、引き渡し請求を行えば済むからです。
割賦販売法の規制を受けるものの、優先的に担保権を行使出来る点は変わらないので、たとえ本人が自己破産をしていたとしても所有権留保状態にある物は返還請求を行えます。返還請求を受けても既に転売済みのため返還出来ない場合には、他人物売買を行ったとして詐欺罪に問われる危険性があります。
登記が必要な動産については所有権留保の対抗要件として登記が必要
所有権留保となっている動産ならば全て返還請求を行えるわけではありません。動産の中には登記または登録を必要とする普通自動車や大型自動二輪車といった物があります。所有権留保が付いた動産を取得した善意の第3者については、善意無過失である限り所有権留保が付かない所有権を取得可能です。
そこで、所有権留保に基づき返還請求をする際には、登記または登録を行った状態で対抗要件を備える必要があります。また、担保権に基づく別除権を破産管財人に対して主張する際にも、登記または登録をしない限り対抗できません。所有権留保の状態にあるからといって、常に別除権を行使して優先的に債権を行使出来るわけではなく、対抗要件を備えなければならないという点を動産について意識しなければなりません。