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小規模個人再生と給与所得者等再生の使い分けをするポイント


個人再生は裁判所の監督下で債権者の権利行使を成約しつつ個人である債務者の経済生活の再生を簡易迅速に図るための制度です。民事再生法の特則として設けられていますので個人版民事再生とも言われます。個人再生には、小規模個人再生・給与所得者等再生の2種類の手続きがあります。

小規模個人再生が最も頻繁に使われる手段

小規模個人再生とは将来において継続的収入の見込みがある個人で無担保の負債が5,000万円以下の債務者が利用できる個人再生の手続きです。小規模個人再生は債務者がその収入を弁済資源として全債務のうち一定の金額を分割で返済する再生計画案を作成した場合に、再生計画案に対する債権者の決議と裁判所の認可を条件として再生計画に基づく弁済を履行することによって残債務を免除するという手続きです。頻繁に使われる1,500万円未満の小規模個人再生ならば、最低弁済額は100万円以上で最大1/5に圧縮可能です。圧縮した債務を36回払いで返済すれば良いので、500万円が債務総額ならば月28,000円を36回支払うだけで完済とみなされます。

ポイントとなるのは、圧縮率が高いことと債権者にとっては全額戻らない場合とは異なり、2割程度の返済を期待出来るので自己破産よりはマシと考えられることです。債務者にとっては、自己破産を行うためには免責不許可事由に該当する借入があって難しいというケースで取り得る債務整理方法となります。しかし、小規模個人再生を行うためには、再生計画案に対する議決を経る必要があるので、債権者の大半と既にトラブルに発展して拗れている場合には債権者による決議で否決されてしまう可能性を含んでいるわけです。消極的賛成という明確な書面による反対決議がなされない限りは、再生計画案は可決されると考えられますが、金額ベースで議決権が与えられるので過半数の債権を持つ1社が反対すれば即再生計画案が否決されてしまいます。任意整理の交渉が決裂して既に関係が悪化している場合には、再生計画案が否決される可能性も考慮して動かなければなりません。

小規模個人再生の債務圧縮率が高い理由として、元々は収入が不安定な個人事業主や自営業者を対象とした手続き方法だったためです。会社員とは異なり、毎年年収が安定することが無い個人事業主にとって、3年間毎月返済を続けることは高いハードルとなっていました。そこで、債権者による消極的賛成を決議により得ることを条件として、圧縮率が高い小規模個人再生が実現しています。債権者にとっても自己破産を行われて破産免責決定が出れば、全額回収不可能に陥ることを考えれば個人再生でも仕方ないと考えるわけです。

給与所得者等再生は事情があって小規模個人再生が使えない時に有効

これに対して給与所得者等再生とは小規模個人再生の対象となる債務者のうち一般のサラリーマンのように「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつその額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」が利用できる個人再生の手続きです。変動幅が少ない安定収入があるならば、可処分所得を計算した上で返済可能な金額を算出し、生活立て直しを図りながら再生計画案通りに返済することを求めます。

給与所得者等再生は小規模個人再生よりも、返済額が多い代わりにさらに簡素化された手続きです。すなわちこの手続きでは可処分所得の2年以上の金額を弁済に充てることを条件として、再生計画案に対する債権者の決議の省略が認められています。可処分所得2年分以上の金額を36回払いで分割返済することにより、債権者の決議を経ずに再生計画案を裁判所が認可するわけです。債権者による再生計画案の否決が無い分だけ、裁判所の審査に通過出来れば個人再生を認められる可能性が高くなります。

但し可処分所得要件が意外と厳しいためか、給与所得者等再生よりも小規模個人再生を選択する人の割合が高いです。個人再生手続きは、申立書類作成の難易度が高いので弁護士へ最初から委任します。なお、給与所得者であっても小規模個人再生を選択することは当然に認められているので、先に小規模個人再生を申請して否決されそうになったら給与所得者等再生へ移行するといった方法もあります。

住宅資金貸付債権に関する特例なら住宅ローンは別枠返済出来る

この他、住宅ローンがある場合には住宅資金貸付債権に関する特則の適用を受けることもできます。住宅資金貸付債権に関する特例は住宅ローンを抱えて経済的破綻に瀕した個人債務者が住宅を手放さずに生活の債権を果たすことができるようにするため、再生計画において住宅ローンの弁済の繰り延べを行うことにより毎月の返済額を調整します。今までの返済額が辛いからこそ、債務整理に着手しようと考えるので住宅ローンの返済期間を長くすることで、毎月の負担額を減少させて一般債務については3年間で圧縮して完済を目指します。

住宅ローンの完済という目的を維持しつつ、債務整理を行うことが出来れば生活が安定して、仕事に対するモチベーション維持にも繋がります。再生計画案の3年間を経過した後は、今まで毎月返済していた金額と同額を貯蓄に回すことが出来るようになるので今度は貯蓄形成にも役立つでしょう。自己破産を行ってしまうと、持ち家は処分することに繋がりますが、個人再生ならば持ち家を維持したままの債務整理が可能です。住宅ローンを提供している銀行を始めとする金融機関にとっても、完済間近の住宅ローンならともかく半分以上残った残債がある状態では、抵当権を行使して競売を行っても残念ながら貸付債務の全額回収には至りません。そこで、住宅ローン特則を使った個人再生ならば、少なくとも回収までの期間が長くなったからといって元本全額回収出来るわけですから、金融機関側が損をしない仕組みです。再度個人再生計画案が頓挫した時には、改めて抵当権を行使すればよいわけです。

この特則は、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらの個人再生手続きでも利用することができます。但し保証会社が代位弁済をした後6ヶ月を経過するとこの特則を利用することができなくなります。債務整理を早期に着手しなければならない理由として、住宅ローン特則を適用させた個人再生を行うためには、準備期間が僅かしか無いために急ぐ必要があるからです。住宅ローンまで滞納をしている状況下では、自己破産しか選択肢が無くなってしまうでしょう。住宅ローンを抱えた状態での債務整理は、債務整理を専門とする弁護士への一刻も早い相談が必要となるわけです。



 

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