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過払い金があっても自己破産できる?手持ちの現金額により破産手続きに違いが生まれる


過払い金をある程度回収できそうだが、それでもその他の債務をすべて返済することは難しく、全体的な方針としては自己破産しかないだろうと思われる場合について、ご説明します。過払い金を取り戻せるあてがあっても自己破産することが可能なのかどうか、ということを疑問に思う方が多いからです。

①過払い金がまったく残らない(0円)場合

はじめに、過払い金を回収しても、弁護士費用や実費などを支払って、残金が全くなくなる場合についてお話します。このとき、債務額が多く(例えば200万円など)その返済が困難な場合には、当然に自己破産の申し立てができます。そして、その債務者には資産が全くありませんので、「同時廃止」という簡易な手続きで自己破産の申し立てをすることができます。 同時廃止の場合には、約三ヶ月程度で免責決定を得られることが多いです。

②過払い金が20万円未満の場合

過払い金を回収して、弁護士費用や実費などを支払って、残金が20万円未満の場合についてお話します。この時も、その他の残務債務が多く(例えば200万円など)返済が困難という場合には、自己破産の申し立てができます。 そして手持ちの現金が20万円未満になりますので、この場合にも「同時廃止」という簡易な手続きで自己破産の申し立てをすることができます。自己破産の申し立てをする場合でも、生活に必要最低限の現金を持っていることは許されるのです。 ①の場合と同様に、同時廃止の場合には、約三ヶ月程度で免責決定を受けられることが多いです。

このように、過払い金から弁護士費用や実費を捻出して、20万円未満の現金が残る場合には、債務者が自ら弁護士費用や実費を支払わず、最低限の現金を手元に残したまま自己破産の申し立てができますので、債務者の家計を圧迫しないで済むというメリットがあります。

③過払い金が20万円以上33万円未満の場合

過払い金を回収して、弁護士費用や実費などを支払って、20万円以上33万円未満の残金がある場合についてです。このときも、残債務が多く(例えば200万円など)返済が困難なときには、自己破産の申し立てができます。ただし、現金が20万円以上ある場合には「同時廃止」というわけにはいかず、多くの地方裁判所においては「小額管財」という手続きになります。小額管財の場合には、免責決定が得られるまでに、半年程度かかることが多いです。小額管財という手続きにおいては、99万円未満の現金は、自由財産として破産者が保持したまま自己破産の申し立てをすることが可能です。

このように、過払い金から弁護士費用や実費を捻出して、さらに99万円未満の現金が残る場合には、債務者が自ら弁護士費用を負担しないで、99万円未満の現金を手元に残したまま自己破産の申し立てをすることができるのです。 このようにすれば、自己破産後の生活の再建も非常に容易になります。

しかし、民事執行法第131条第3号は「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」を差押禁止財産としているので、別途定められている標準的な世帯の2月間の必要性経費を勘案する必要があります。民事執行施行令第1条は「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」は66万円であるとしています。こうした規定に基づき、1月分の標準的な世帯の必要生計費に該当する33万円に満たない現金を保有する世帯についてまで、自己破産手続きを少額管財事件として行うことは、果たして適切かという疑問が残ります。そこで、東京地方裁判所では、過払い金が20万円以上33万円未満の場合には本来は少額管財事件として処理することになっていても、同時廃止事件として処理を行う運用が平成29年4月1日から行われているわけです。

③過払い金が33万円以上99万円未満の場合

過払い金を回収して、弁護士費用や実費などを支払って、33万円以上99万円未満の残金がある場合についてです。このときも、残債務が多く(例えば200万円など)返済が困難なときには、自己破産の申し立てができます。ただし、現金が33万円以上ある場合には標準的な世帯の1ヶ月の生計費を上回る現金を保有していることから、「同時廃止」というわけにはいかずに「小額管財」という手続きになります。小額管財の場合には、免責決定が得られるまでに、半年程度かかることが多いために生活費が高い大都市では早く生計を立て直す必要がある場合であっても、少額管財のために破産免責決定が出るまでに時間を要することが少なくありません。小額管財という手続きにおいては、99万円未満の現金は、自由財産として破産者が保持したまま自己破産の申し立てをすることが可能ですから、債権者に渡ることもありません。

しかし、少額管財事件として処理するためには破産管財人に対して引継予納金20万円が破産管財人報酬として渡ることになります。不正な自己破産申し立てを防ぐためという理由があるものの、少額管財事件であっても破産免責決定が出るまでに半年以上掛かることになるので、事実上破産管財人に専任される弁護士が報酬を得るだけという状況に陥っています。地方裁判所により、少額管財事件として処理される保有現金額には違いが生まれているので、同時廃止事件となるか少額管財事件となるか、弁護士に地方裁判所の事情を聞いておく必要があるわけです。

④過払い金が99万円+αの場合

まず過払い金を回収して、弁護士費用や実費などを支払って、99万円+αの残金がある場合についてです。このときも、残債務が多く(例えば200万円など)返済が困難な場合には、自己破産の申し立てができます。 ただし、現金が20万円以上ある場合には、「同時廃止」というわけにもいかず、「小額管財」という手続きになります。小額管財の場合には、免責決定が得られるまでに半年程度かかることが多いです。

ここで小額管財という手続きにおいて、99万円未満の現金は、自由財産として破産者が保持したまま自己破産の申し立てをすることが可能です。自己破産の申し立てをする場合でも、生活のために必要最低限の現金を持っていることは許されるからです。

しかし99万円を超える現金は持っていることができません。 そこで二つの方法があります。

1つは99万円未満の現金は持ったままで、その余の現金は管財人に引き継ぐ形で、自己破産の申し立てをするという方法です。この方法ですと、直ちに自己破産の申し立てをすることができます。しかし99万円を超える部分については、管財人に引継ぎ債権者への支払いにあてる必要が生じてしまいます。

もう1つは、99万円を超える現金については、しばらく生活費として使い、現金が99万円未満になってから自己破産の申し立てをするという方法です。この方法ですと、債権者への支払いにはお金をほとんど回さないですみます。しかしただちに申し立てをすることができないというデメリットがあります。

両者のいずれが良いかは、単純には決められません。急いで自己破産の申し立てをする必要性と、現金を生活費に充てる必要性とを比較して、いずれがよいのかを判断する必要があります。

いずれにしても債務者は破産法に抵触しない範囲で、自分の利益を最優先に考えることができます。債権者のことばかりを考えていては、一度破綻した生活を立て直すことはできないのです。

⑤過払い金が非常に多額の場合

過払い金を回収して、弁護士費用や実費などを支払って、99万円をはるかに超える残金がある場合についてです。この場合には、まず、果たして自己破産の必要性があるのかどうかという問題があります。 返済できる範囲の債務であって、過払い金が十分にある場合には、破綻はせずに弁済していくという選択肢もあります。分割ではなく一括で払う場合には、債務の減額を認めてくれる業者もあります。

また民事再生の申し立てをして、債務を圧縮して支払うという方法もあります。しかし、どうしても自己破産しかないという場合には、99万円未満の現金は持ったままで、その余の現金を管財人に引き継いで自己破産をするという方法があります。

自己破産申し立て時に過払い金の取扱いが難しいのは20万円以上99万円未満の場合

自己破産申し立ては、破産管財事件として処理することが本来の姿であることに間違いはありません。しかし、裁判所に申し立てが行われる自己破産数が多いために、なるべく少額の事件については同時廃止事件として簡易的に処理し、生活再建を行ってもらった方が本来の法律趣旨に合います。問題となるのは、少額管財事件として処理する金額が、引継予納金との兼ね合いで破産申し立て人にとって不利な取り扱いとなることが多いことです。

具体的には、自由財産として認められている99万円以内の現金を保有している場合に、20万円以上99万円未満の現金保有者が少額管財事件として処理されることにあります。破産管財人の報酬として20万円が引継予納金という形で引き継がれることになりますが、弁護士へ依頼して自己破産申し立てを行った場合には、弁護士報酬を支払った上に引継予納金20万円を徴収されることになるので、自己破産を行うだけで50万円以上のお金が必要になってしまうわけです。

民事執行法第131条第3号と民事執行施行令第1条により、1ヶ月の標準的な世帯生計費が33万円と規定されていることから、民事執行法では2ヶ月分の66万円未満の現金差押を禁止しています。東京地方裁判所が運用面で行っている20万円以上33万円未満については、破産同時廃止事件として取り扱う制度は、生活再建を早めるために有効な手段と考えて良いでしょう。東京地方裁判所への自己破産申し立てが以前集中した原因として、自己破産申し立ての運用面で地方裁判所ごとに法律上規定されている範囲内を超える部分で、裁判所ごとの裁量が行われている点を挙げられます。弁護士選びをしっかり行うことで、自己破産に至るまで困窮している状況下では、早期の生活再建へ至るために最も有利な自己破産方法を模索してもらえます。



 

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