【質問】弁護士に任意整理を依頼しました。その後パチンコの負けが込んでしまい、また借金をしてしまいました。どうすればいいでしょうか?
【答え】このような行為は刑法の詐欺罪に当たることもありえます。弁護士も安心して任意整理に当たれません。とにかく正直に弁護士に申告し、相談することが肝要です。とにかくこのような行為は厳に謹んで下さい。弁護士に債務整理を依頼した依頼人は、借金の返済が不可能な状態になっているはずだし、経済的に逼迫した状況は変わりないと思います。そんなときには、ついまた借金をしようと安易に考える人もいるようです。
しかし、依頼した弁護士が「受任通知」を業者に発送した後に、依頼人が別の業者から新たに借入れをすると、条件次第では刑法の「詐欺罪」に触れる犯罪行為になる可能性があります。
また自己破産のようなケースでは、一部の業者にだけ返済するのは不公平な「偏波弁済」となり、後々問題が生じて免責決定を受けられなくなる危険性があります。これらの行為は絶対にしてはいけないことですから、十分気を付けてください。
【メモ】任意整理を弁護士に依頼して分割払いをしているときに、パチンコなどで新たに借金をし、返済が出来なくなった場合に、自己破産に切り替えるケースも多いと聞きます。その際に自己破産は裁判所を通しますので、新たな借金は必ず発覚しますので免責が受けられないという結果になります。 クレジットカードを1枚黙って残したまま債務整理をしようと考える人もいますよね。任意整理では発覚しない場合もあるかと思いますが、やはり途中で支払いが出来なくなって自己破産に切り替えた時に発覚しますので大変危険な行為です。また弁護士の辞任理由となる場合もあります。
任意整理依頼後は新たな借金が全て禁止されているのか
任意整理を弁護士に依頼した後は、全ての借金をしてはならないと説明する弁護士が少なくありません。なぜなら、弁護士が受任した時点から任意整理の和解が成立する迄の間に行われた新たな借金は、任意整理交渉を破壊する可能性が高いからです。弁護士の立場からすれば、せっかくまとめた任意整理の和解案に対して新たな借金をしていることが分かれば、和解が結ばれずに弁護士の成功報酬を受け取れなくなるからです。中には刑法の詐欺罪に該当する可能性があるからと依頼者に不安を植え付ける弁護士も少なくありません。
しかし、個人再生手続きや自己破産とは異なり、任意整理を行っている段階での新たな借入については、例外的に認められることがあります。例外規定についての説明をせずに、一律に弁護士が受任して以降の全ての新規借入が詐欺罪に該当する説明を行う弁護士は、任意整理の交渉力だけでなく債務整理全般に関しても遂行能力に疑問が生まれかねません。ポイントとなるのは、安易な気持ちでの新規借入は慎むべきであって、個人再生や自己破産へ移行しないならば、偏頗弁済による心配をする必要がありません。なぜなら、任意整理は特定の債権者との間だけで交渉を行える時点で、既に偏頗弁済そのものだからです。
任意整理依頼後であっても借入出来る手段は3つ
任意整理を弁護士に依頼後であっても、借入出来る手段として次の3つがあると知っておく必要があります。 ①生命保険や学資保険加入者による契約者貸付制度 生命保険や学資保険加入者により契約者貸付制度は、解約返戻金が受け取れる貯蓄性が高い保険については、払い込み済み保険料の範囲内で契約者貸付を利用できます。任意整理を行っている段階では、個人再生や自己破産とは異なり債務の届け出が裁判所に必要ありません。また、貸金業者では無くあくまでも保険会社から自らが入らこんだ保険料を原資として借入しているに過ぎないので、解約返戻金を受け取らずに一時的な資金調達を行っている状態です。
②既存の貸金業者からの追加融資やおまとめローンによる借り換え 任意整理は全ての債権者に対して交渉を行う必要が無いので、既存の貸金業者と取引がある状態で追加融資を受けることは可能です。実際に借入が出来るかどうかは別として、借り換えを行うおまとめローンを行っても良いことになっています。
③社会福祉協議会からの生活扶助制度に基づく臨時貸付 社会福祉協議会が社会保障制度の一貫として行っている臨時貸付は、公的な融資という意味合いが強いので貸金業者からの借入とは意味が異なります。個人再生や自己破産を行う場合には問題となりますが、そもそも偏頗弁済前提の任意整理のみを視野に入れているならば、社会福祉協議会からの臨時貸付を受けても問題ありません。
任意整理依頼後に借金をするとなぜ弁護士は辞任するのか
任意整理を弁護士に依頼した後で、借金をするとなぜ弁護士が辞任するのか詳しく知るほど不思議に思うでしょう。弁護士に委任する際に、債務整理全般の委任契約を行っているならば、債務整理の手段を任意整理に限定するキッカケとなる新規の借金は問題となります。なぜなら、個人再生と自己破産では、偏頗弁済が行われていると裁判所から指摘されて再生計画案が通らなかったり自己破産時の破産免責決定を受けられない可能性があるからです。しかし、任意整理のみを行う契約ならば、任意整理自体が債権者を指定して弁護士に依頼出来ることになっています。そこで、弁護士が受任後の新規借金を理由として辞任することは、弁護士の職務放棄として弁護士会に懲戒請求出来る事案となります。
任意整理のみを債権者指定で弁護士が受任している場合には、着手金を受け取り和解交渉を行うことが弁護士の仕事であって、新規の借入があるからといって辞任は認められません。債務整理全般を弁護士が受任している場合ならば、個人再生と自己破産が出来なくなる新規の借入を行えば、弁護士に辞任されても文句が言えません。任意整理のみを受任した弁護士にとって、自らの和解交渉の障害となる行為を全て排除して楽に交渉を進めようという意図から、成功報酬が受け取れなくなることを危惧して弁護士が依頼者の借入を制限しているわけです。