債務整理では業者の提示する返済条件を受け入れた方が、解決までスムーズにいくことも多いです。特に不動産などが担保にある場合はこちらの希望条件通りには運ばないケースもあります。今回は不動産担保の借入金を一部一括返済して解決した例になります。
不動産担保の借入金を一部一括返済して解決した例
Cさんは52歳の会社員で月収は15万円位でした。遊興費(飲食代)のために内緒でクレジット・消費者金融から債務を負担するようになり、短期間の内に信販会社3社・消費者金融5社より約400万円の負債を抱えてしまいました。
このうち消費者金融業者1社からは200万円の借入れをし、担保としてCさんとCさんの妻の共有名義の建物に200万円の根抵当権設定登記をしました。この消費者金融業者からの借金は、他の数社の借金をまとめて返済するために一度に200万円もの借入れをしたものでした。多額のクレジット・サラ金債務を抱えて返済困難になったために、家族への請求や取り立てが行われるようになったため、Cさんがクレジット・サラ金から借金していることが、妻にもバレてしまいました。
観念してCさんは妻と話し合った結果、妻も公務員として働いており18万円位の月収があったため、Cさんは自分の収入をすべて、クレジット・サラ金の返済に充てることで債務の整理を行うことを妻にも納得して貰い、債務整理を弁護士に依頼しました。
弁護士が利息制限法で計算した結果、Cさんの残債務は約240万円になりました。建物に根抵当権設定をしている消費者金融業者残債務として約190万円を請求していましたが、利息制限法で計算すると約130万円になりました。
労働金庫に相談して100万円の融資
担保を有していない7社の信販・消費者金融業者利息制限法により計算した残債務を認めた上で以後の利息を一切放棄して、Cさんの収入の範囲内で分割弁済することで承諾しました。根抵当権設定を有している消費者金融業者は130万円を一括で支払いでなければ応じない、そうでなければ建物の競売申立てをすると主張したので、Cさんは労働金庫に相談して、100万円の融資を受け、残りの30万円は自分の妻のボーナス分で決済して、根抵当権を抹消させることができました。
他のクレジット・消費者金融業者の債務もほぼ一年間ですべて返済を完了しました。勿論会社も退職しないで良かったので、一時は諦めていた退職金も全額貰えることになりました。
根抵当権設定をされた不動産担保ローンは対象方法が難しい
借入期間が長いほど、かつてのグレーゾーン金利適用を受けて過払い金が発生しているケースが少なくありません。返済に困った時点で早期に弁護士へ相談すれば、債務整理方法として複数の選択肢を得られるでしょう。しかし、無担保ローンが全ての場合とは異なり、根抵当権設定された不動産担保ローンがあると、債権者は返済が滞るだけでなく契約内容の変更に際しても強気の姿勢を示しがちです。金利引直計算を行った正規金利での契約内容見直しは本来なら法律に則った手続きとして認められて良いはずです。
しかし、任意整理という状況に加えて根抵当権設定が行われているので、不動産を競売にかける権利を金融業者側が持っている状況では厳しいでしょう。なぜなら、不動産担保ローンは無担保カードローンよりも低金利で融資が行われる傾向があるので、債務減額幅は僅かにも関わらず競売リスクが増えてしまうからです。弁護士にとっても住宅ローンとは異なり、持ち家を残すためには偏頗弁済に応じるしか無く、一括返済を行う代わりに減額依頼をするといった方法しかありません。
会社員だったからこそ実現出来た労働金庫からの借入
複数の消費者金融から借入を行い、任意整理交渉を行っている状況下で、根抵当権を外すためのお金を用意することは至難の業です。労働組合員や生活協同組合員のために作られた労働金庫は、非営利団体として運営されている金融機関だからこそ、根抵当権を外すための費用の一部として借入が出来たと考えられます。労働金庫法に基づく融資が行われているので、貸金業法で定められている総量規制に該当しません。サラ金利用者から見れば任意整理中になぜ新たな借入が出来たのか不思議に思うでしょう。
ろうきんが設立された趣旨に則り、持ち家という資産がある状況下で根抵当権を抜くために必要な融資を受けたいという状況を真摯に説明した結果として目的融資を受けられたと考えられます。弁護士が既に代理人として入った状況下で、任意整理の和解交渉を行うために必要な一括返済全額のうちの一部不足分だけを借入したいという希望を叶えた形になるわけです。債権者の言い分がある程度まかり通る状況下では、不動産担保ローンを任意整理する難しさをろうきんが同じ金融機関として知っているからこそ、融資をしてもらえたと考えて良いでしょう。