個人再生の手続きは裁判所によって運用が相当異なっていますが一般的な手続きとして以下説明いたします。
個人再生の管轄裁判所は、特定調停のように簡易裁判所ではなく、破産・民事再生と同様に地方裁判所で行います。まず債務者は、申立て時に裁判所に対して債権者一覧表を提出します。裁判所から個人再生手続き開始決定(東京地裁では申立て後1ヶ月が目安)が出ると、再生手続開始の効力が発生します。開始決定の効力としては、債権者の個別的権利行使が禁止され、強制執行等の手続きも中止されます。開始決定と同時に、裁判所は債権届出期間・異議申述期間を定めて、債権者に通知します。
東京地方裁判所の運用はパターン化している
個人再生では、通常の民事再生のように監督委員や調査委員は置かれずに、代わりに個人再生委員の制度が設けられています。この個人再生委員は、法律上、再生債権評価の申し立てがあった場合を除いて常に設置しなければならないものではなく、裁判所が必要と認めるときに置かれると規定されています。但し、東京地裁では運用上全ての事件について個人再生委員を選任する取り扱いをしています。東京地裁では、個人再生委員は申立て直後から約6ヶ月間債務者から振り込まれる分割予納金(計画弁済予定額)の送金を受け取ることにより、再生計画案の実現可能性をチェックする、という運用になっています。
開始決定後、債権者は債権届出をすることになりますが、何も届け出ないと債務者が作成した債権者一覧の記載内容で届出したものとみなされます。債務者や他の債権者は、届出債権に対して異議を不当とするときは再生債権の評価の申立てをします。この場合、裁判所は個人再生の委員の意見を聞いた上で再生債権の評価をすることになります。異議のなかった債権と評価済み債権は、個人再生の手続き内で確定します。
再生計画の認可まで
債務者は、所定の期限までに裁判所に再生計画案を作成・提出します。裁判所は、債務者から提出された再生計画案を書面により決議します。議決権を有する債権者のうち書面で不同意と回答した者が頭数で半数未満かつ債券額で二分の一以下であった場合には、再生計画案は可決とみなされます。再生計画案が可決された場合には、裁判所は、再生計認可の決定をします。ただし、給料所得者等再生では、再生計画案に対する債権者の決議の制度はありません。給料所得者等再生では、裁判所は、書面により再生計画案について債権者の意見を聴取しますが、それには拘束されません。他方、再生計画案が法定の要件を満たさない場合には、裁判所は再生計画不認可の決定をします。
認可決定確定後の手続き
認可決定の確定により、個人再生の手続きは終結します。したがって、再生計画に基づく履行は債務者自らが行い、裁判所や個人再生委員は関与しません。仮に再生計画の不履行があっても、債権者は別途に訴訟を起こさない限り、強制執行することはできません。ただし、再生計画の不履行があった場合において債権者が申立てをすれば、裁判所に再生計画取消しの決定をさせることは可能です。これに対して、債務者は再生計画に基づき履行を完全に行った場合には、残余の債務の支払いを免れることになります。
個人再生手続きは弁護士に依頼しよう
複数の債務整理方法がある中で、個人再生手続きについては本人申し立てが望ましくないとされています。なぜなら、極めて強い精神力と日頃からの利用明細票管理がしっかりしていれば、自己破産に限り裁判所書記官に記入方法を聞きながら申し立てを行うことは可能ですが、個人再生手続きは更に難易度が高いからです。住宅資金特別条項を適用させて個人再生手続きを行う場合には、事前に住宅ローンを扱う金融機関とのリスケジュール調整を交渉しなければなりません。弁護士以外の人が交渉しようとしても、面倒に思われて金融機関からは門前払いされることが珍しく無いわけです。
また、東京地裁では必ず再生委員が任命されることになりますが、再生委員は弁護士しかなれないので司法書士に書類作成を依頼していても別の弁護士が担当することになります。このため、司法書士に支払う報酬額に加えて再生委員に支払う報酬額が加算され、同じ弁護士が再生委員に任命された場合よりも再生委員報酬が高額です。このため、僅かに司法書士の方が弁護士よりも個人再生手続き書類作成が安くても、個人再生手続き全般を通して考えれば割高になってしまいます。
最初から弁護士に依頼しておけば、個人再生手続きを行う際に小規模個人再生と給与所得者等再生手続きのどちらを使って行えば良いか、債権者への債務調査段階で手応えから判別可能です。金融機関との住宅資金特別条項についてもしっかり粘り強く交渉してもらえるので、個人再生が最終的に認めてもらいやすくなります。