貸金業者による督促行為により、多重債務者が増えるだけでなく自殺者が急増して社会問題化しました。テレビドラマのイメージが強いサラ金業者による督促行為は、改正貸金業法により大半が規制されているものの、今でも知らないフリをして違法な督促行為を続けている貸金業者がいます。事態を重く見た金融庁からは、法律の条文では分かりにくいために、以下のように金融庁のガイドラインがアナウンスされています。以下の行為は全て禁止されているので、行政処分または刑事処分対象だと知った上で速やかな通報が望ましいです。
人を威迫する行為に該当する恐れの大きい行為
・暴力的な態度をとること
・大声をあげたり乱暴な言葉を使ったりすること
・多人数で債務者,保証人等の居宅等に押し掛けること
・保険金による債務の弁済を強要又は示唆するような言動を行うこと
人の私生活を若しくは業務の平穏を害するような行動
・午後9時以降午前8時までの時間帯に債務者に電話をかける行為
・正当な理由が無く債務者の勤務先に電話をかけたり訪問する行為
・債務者の自宅玄関扉に借入の事実を暴露するような貼り紙をする行為
・債務者に他の貸金業者から借りて返済するよう迫る行為
・債務者の親族に代わりに支払うよう要求する行為
・弁護士・司法書士に債務整理を依頼しその旨の受任通知を受けているのに無視して返済を要求する行為
対抗手段としては監督官庁への行政処分申告、警察への通報、仮処分申立、損害賠償請求などがあります。 弁護士が受任し代理人となった段階で債務者への直接的な取り立てはできないことになりますので、取り立てがあった場合は速やかに弁護士に報告しましょう。
貸金業法に基づく融資を行う正規貸金業者だけでなく保証会社も含まれる
上記ガイドラインに掲載されている違法行為は、貸金業法第21条に記載されている貸金業者に対して禁止している督促行為となります。違反すると「二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という重い罰則規定があるので、警察への通報が有効な手段です。
また、正規の貸金業者は貸金業者登録番号が必ず公式サイトだけでなく契約書面にも記載されているので、監督官庁へ行政処分申告を行うだけでも違法な取り立てが止まります。貸金業法の対象となるのは、貸金業者だけでなく金銭消費貸借契約に伴う保証会社についても同様に貸金業法による規制対象です。債権回収会社からの督促を受ける際には、郵便と電話以外の督促を受けた時に証拠として録画・録音を行った上で監督官庁と警察への届け出が有効な手段となります。
違法な督促行為を受けた時の対処方法
違法な督促行為を受けた際の対処方法とて、最も手軽に行える方法は110番通報です。貸金業者が行う違法行為の中でも金融庁のガイドラインに含まれる人を威迫する行為は、既に刑法犯として規定されています。
・暴力的な態度をとることは、刑法第208条に定められた暴行罪に該当します。実際に怪我を負わせれば傷害罪になりますが、暴行罪については暴力的な態度を取るだけで有効になるので、手を出されていなくても録音や録画だけでも証拠能力があるわけです。2年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される罪です。
・大声をあげたり乱暴な言葉を使ったりすることは、刑法222条の脅迫罪に該当します。暴行罪と判断しづらい時には、脅迫を受けていると110番通報をした上で、警察官が到着した時には暴行罪と脅迫罪のどちらが該当するのか確認してみると良いでしょう。2年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される罪です。
・多人数で債務者・保証人等の居宅等に押し掛けることは、まず刑法第130条により債務者・保証人から「お帰り下さい。」と繰り返し言われたにも関わらず帰らない時点で不退去罪が成立することから始まります。110番通報を行う際には、「何度お帰り下さいと伝えても帰らない上に、多人数で押し掛けて怖い。」と通報するだけで、警察官から刑法第107条に基づき多衆不解散罪について貸金業者にも説明されるでしょう。
・保険金による債務の弁済を強要又は示唆するような言動を行うことは、刑法第223条に定められた強要罪に該当します。3年以下の懲役刑しか無いので、110番通報する際には具体的にどのような強要をされたのか録音・録画と共に提出すると立件してもらいやすくなります。
意外と知られていませんが、アポなし訪問については居住者から「お帰り下さい」と2度以上宣告を受けても帰らないと、刑法第130条による不退去罪が成立するので、110番通報を行うと必ず警察官が対処しなければなりません。その際に貸金業者の担当者は、氏名・住所・年齢を都度確認されるので何度も同じ行為を繰り返していると督促業務が出来なくなるので嫌がります。
正規の貸金業者は督促のために自宅への訪問は減少している
貸金業法に基づき営業を行っている正規の貸金業者は、行政処分と刑事処分を恐れて自宅への訪問を行うことは安否確認以外では減少傾向にあります。誰が訪問してきているのか確認するだけで、貸金業法第21条で禁止されている行為や刑法犯に該当する行為があれば、迷わず通報することが望ましいです。
一方、近年社会問題化していることとして、家賃債務保証会社の督促担当者による違法行為が目立ちます。債務整理を検討している人の中には、家賃債務についても滞納していることがありますが、あくまでも家賃債務保証会社は貸金業者では無いために、貸金業法第21条で禁止されている行為を平気で行ってくる貸金業者出身者が多いです。このため、誰が何の目的で訪問してきているのか確認した上で、刑法犯については誰に対しても訴えることが出来るので、刑法犯罪を行った時のみ110番通報を行うことになります。アポなし訪問は不退去罪が成立しやすいので、誰が何の目的で訪問しているのか確認した上で対象方法を考えると良いでしょう。日常生活に支障が出ることを想定して、早めに債務整理に着手することが望ましいです。