債務整理受任後にどのような場合に弁護士が辞任してしまうのでしょうか?
弁護士は最後まで必ず処理してくれるとは限らないと知ろう
弁護士に債務整理を依頼すれば、後は完全に放置しても任務完了してもらえるという甘い考え方をしているなら、実際に自分で債務整理にチャレンジしてみると過酷さが分かります。依頼者と債権者の間に入って防波堤になる弁護士は、高額報酬と引き換えにストレスが大きい債権者の取立に対する防波堤の役割を果たしているわけです。
弁護士目線から見た時に、依頼者との契約を続けられないと判断すれば、弁護士は辞任というカードを依頼者に突きつけることが出来ます。一方で、依頼者は弁護士が報酬に見合った働きをしなければ、契約解除を行えることになっているので、辞任と契約解除は双方が持つ権利だと知っておくと良いでしょう。弁護士が辞任する際には、表向きと本音を含めると全部で5つの辞任理由があり、表向きの理由4つが主に辞任理由として使われます。
①依頼者からの虚偽申告
②弁護士報酬の分割金不払い
③特定の債権者だけ債務整理対象から外す偏頗弁済行為
④双方の音信不通や行方不明
⑤上記4つの理由には該当しない弁護士による着手金報酬狙い
弁護士が辞任をする理由としては、①~④のうちどれかを言ってきますが、弁護士の本音として着手金狙いでやる気が最初から無かったのではと疑うことも時には必要です。
弁護士へ虚偽の申告をすると辞任出来る
依頼者との信頼関係が保てなくなった場合ですから相当な理由がなければ弁護士はまず辞任はしませんが、依頼者からの虚偽の申告、分割金の不払い、音信不通・行方不明などが理由として挙げられます。
代理人弁護士に虚偽の事実を告げ、あるいは必要な事実を告げない場合があります。 具体的な事例としては債権者(借入先)を過小に申告する場合が多く見られます。 特に債務者は法的知識がなくクレジットカードによる物品購入や親族・友人からの借り入れを借財として認識していない場合があります。 ヤミ金にような高利貸し、あるいは保証人、親族、恩人を意図的に除外する例もあります。 このような部分的処理は依頼者自身の多重債務の根元を阻害する要因になりますから、全ての情報を開示するように心がけましょう。
弁護士不足を解消するために司法試験制度改革を行った結果として、司法試験合格者数は増えたものの従来と同様の法曹家としての質が保たれているかは疑問が残ります。特に法科大学院卒業後に弁護士資格を取得した弁護士の中には、債務整理に必要な予備知識を依頼者に説明不十分なことを棚に上げて、弁護士への債権者情報過少申告を理由として辞任してしまうケースが少なくありません。
弁護士への委任契約以後に行ってはならない信用取引の範囲と種類について、細かく依頼者に事前レクチャーしておけば済むことですが、残念ながら行われていないことがあります。弁護士への虚偽申告は、依頼者が意図して隠すケースだけでなく弁護士の説明不足により発生するものがあっても、弁護士が辞任してしまう可能性があると知っておきましょう。こういったケースでは、弁護士会に対して弁護士懲戒請求を行えます。
弁護士報酬を分割払いにした時に分割金を不払いする
依頼者の中には弁護士報酬について分割支払いの約束をしているにも関わらずに着手金の支払いを滞らせ一回も支払わないような人もいます。 このような依頼者が多いことから最近の債務整理は着手金を取る方針にしている弁護士や司法書士は多くなっています。弁護士の中には、最初から一括払いしか受け付けない人が出ている背景として、債務整理後に成功報酬を支払わない人だけでなく、そもそも分割払い金すら途中から滞納する人がいる現状です。
分割金を滞らせている理由について、親族の急病で出費がかさんだ等の個別理由がある場合もあります。 個別の理由を速やかに明らかにして分割金滞納を解消する方途を弁護士に相談しながら探っていくべきです。 数回の滞納でも辞任されるケースや何も言わない弁護士もいるようですが、信頼を裏切らない行動をしていきましょう。弁護士の中には、効率重視で手間がかかる依頼者は迷いなく辞任して放り出す人もいるので、人情味溢れる弁護士と出会うことが何より重要です。弁護士の人柄が良ければ、依頼者も迷惑を掛けられないと状況変更があればすぐに相談してくれます。
特定の債権者だけに返済する偏頗弁済行為は法律違反
債務整理においては弁護士の判断で特定の債務者に対する債務について債務整理の対象から外す場合もあります。 これは債務者の利益に適うという判断と債務者間の公平性に反しないとの判断があってなされることです。 自己の判断や不合理な根拠によって一部債権者へ減額することなく優先的に弁済を行いたいとして債務整理の対象から除外することを 希望する人がいますが、無理に代理人にこうした方針を押しつけるのは止めましょう。
よくある事例として、自己破産申し立てを行う際に家賃債務に関してのみ優先的な弁済を行うことが認められています。また、公共料金についても自己破産免責決定後もその場所で生活を続けるために必要なこととして、自己破産申し立ての債権者名簿には入れるものの、破産免責決定を求める際の除外扱いとして優先弁済を求めることが少なくありません。裁判所による決定が必要になるものの、弁護士の法律知識と経験により除外しても良いか慎重な判断が必要になるので、依頼者が弁護士の許可無く偏頗弁済を強行すると法律違反となるだけでなく、破産免責決定が受けられなくなる事態となりかねません。弁護士としては自らが代理人となった自己破産申し立てに対して、破産免責決定を受けられないと不名誉な実績となってしまうので、偏頗弁済を理由とした辞任を行うことがあります。
依頼者と弁護士のどちらか一方が音信不通・行方不明
債務整理の依頼者の中には代理人と音信不通や行方不明になってしまう人もいます。 こういう場合は代理人が辞任するのが一般的です。生活を支えるために頑張った結果として、弁護士と連絡が取れる時間帯に仕事をしていて困難という悲劇的な事態にならないように、土曜日受付が出来る弁護士に依頼するという方法があります。
逆に弁護士の方が音信不通になってしまい、懲戒事例などもあるようです。 自己破産申立事件を受任した弁護士が依頼者と連絡が取れないなどの事情によって早期に破産申立てができない状態になったということで懲戒処分になったケースです。
着手金狙いの弁護士に関わってはならない
弁護士の人数が急激に増えたことにより、債務整理ならば実績が少ない弁護士でも仕事を得られるとして若手弁護士が受任する機会が増えています。経験年数が長い弁護士とは異なり、さじ加減をまだ知らない状態で債務整理を受任すると、着手金だけ受け取れたら良いと考えて適当な理由を付けて辞任してしまう弁護士が残念ながら出ている状況です。弁護士が辞任した際には、辞任理由を明確にした上で次の弁護士探しと同時に弁護士会に対して時には弁護士懲戒請求を行うことが望ましいです。