【質問】 私は住民税を2年分ほど滞納しています。自己破産して免責になったら住民税は払わなくてもいいのでしょうか。
【答え】 免責許可決定がなされていても免責されない破産債権があって、これを「非免責権」といいます。住民税はこの「非免責権」に該当し免責される事はありません。
非免責債権について
免責許可の決定がなされていても免責されない破産債権があります。これを「非免責債権」といいます。以下は破産法が定めている非免責債権の内容です。
①租税等の請求権
②破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
③破産者が故意または重過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
④破産者が養育者または扶養義務者として負担すべき費用に関する請求権
⑤雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預り金の返還請求権
⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
⑦罰金等の請求権(罰金・科料・刑事訴訟費用・追徴金・科料の請求権など)
【メモ】私の経験談ですが免責が下りない場合でも税金などの強制執行は止まるケースが多いと思います。私の場合は実際に強制執行が止まり取り立てや連絡も来なくなりました。執行停止の書面が来ます。 その後は時効がありますので滞納も消えます。ただ行政のスタンスとしてはまとまったお金が入れば支払って欲しいという感じですから、完全に支払い義務が消えたと思わない方がいいでしょう。 小額でも払える方は月3千円~5千円を支払っておけば安心です。特に税金は滞納した場合の利息が大きいですから放置はおすすめしませんが。当然ながら他の消費者金融などについては自己破産で督促や強制執行などの連絡は全く来ません。
租税等の請求権は免責対象にならないが連絡が必要
租税等の請求権は、免責対象にならないものの自己破産準備を行うことが決まったら連絡しておく必要があります。なぜなら、租税として代表的な住民税や国民健康保険税は、5年間の消滅時効があるので一切支払いをしないでいれば時効が成立しますが、租税は裁判を経ずに強制執行出来る点が異なるからです。一般的な債権は、裁判所へ提訴することにより差し押さえを実行出来るようになりますが、租税に関しては公務員により裁判所の判決を経ずに即座に差し押さえが実行可能となっています。
このため、住民税だけでなく国民健康保険税といった地方税を含めて、全ての租税については自己破産手続き準備中の段階で先に連絡をしておく必要があるわけです。自己破産手続きを行うために準備していると連絡すると、破産免責決定を受けた後で破産免責決定通知書のコピーを送付するように言われることがあります。租税債権が消滅時効にかかるかどうかは、該当する役所の対応次第となるので、個別具体的に対処方法を検討しなければなりません。
自己破産を行う際に債権者一覧表を作成しますが、租税債権についても債権者一覧表に入れることになっています。偏頗弁済を防ぐために債権者一覧表に掲載した債務については、原則として破産免責決定を受けるまで支払ってはなりません。しかし、例外的に余裕があれば租税債権については支払っても良いことになっているものの、弁護士へ相談すると自己破産後は借入が出来ない期間が長いので、貯蓄習慣をつけるように言われます。手元のお金をすぐに使ってしまう習慣を無くすことが、自己破産準備期間中から既に求められているわけです。
債権者名簿に記載しなかった請求権とは
債権者名簿に記載しなかった請求権は、主に本人申し立てを行う場合に発生しやすいです。自己破産申し立て書類を作成する際には、裁判所書記官に聞きながら何度も推敲を重ねて提出する人もいます。しかし、債権者名簿には知りうる全ての債権者を記載しなければならないために、法律専門家のチェックを受けた上で行うことが望ましいです。自己破産申し立てを行う方法には、代理人申し立てと本人申し立ての2種類があります。
代理人申し立ては、弁護士へ自己破産手続きを依頼することにより、必要な資料収集を行うことから申し立て書類作成に加えて債権者一覧表作成まで代理人として本人の代わりに動いてもらえるわけです。本人にしか取得出来ない戸籍や所得証明書については、実際に自己破産申し立てを行う直前に役所へ出向いて手配することになります。しかし、債権者一覧表の漏れをチェックする作業を手伝って貰えることから、債権者名簿に記載しなかった請求権が発生することは少ないです。
本人申し立てを行う方法は、全部自分で自己破産申し立て書類作成を行うという極めてハードルが高い手段を取らない限り、司法書士へ書類作成業務を依頼することになります。司法書士は簡易裁判所のみ代理権を持つので、地方裁判所へ申し立てが必要な自己破産手続きは書類作成業務と手続き上のアドバイスのみです。このため、本人がうっかり忘れてしまっていた債務について司法書士へ連絡し忘れていると、うっかり債権者一覧表に載せ忘れてしまう債権者が出かねません。しかし、うっかり載せ忘れてしまった債権であれば、破産免責決定が及ぶので意図的に隠していないまたは重過失により見逃したと認められない限り対処可能です。
債権者名簿に記載しても除外扱いとする債権がある
自己破産の申し立てを行う際に債権者一覧表へ記載した債権者は、全ての債権に対して免責決定を求めるとは限りません。なぜなら、偏頗弁済を防ぐことで債権者平等の原則に従うことは確かですが、日常生活を破綻させてしまう原因となることは避けなければならないからです。具体的には、自己破産を破産同時廃止で行う人の多くが賃貸物件に住んでいるので、家賃支払いや公共料金支払いについては生活に必要なものとして支払いを続けることが認められています。債権者一覧表に掲載しても、破産免責の除外とすることを裁判所に対して求めることが出来る点に注意が必要です。
非免責債権とは異なり、日常生活を維持するために必要な債務返済については、予め自己破産申し立て書類に記載することで裁判所としても認めてくれるわけです。自己破産を行った結果として、日常生活が壊れてしまうならば本来の法趣旨から外れてしまいます。免責債権・非免責債権・破産免責から除外する債権と3種類の債権を明確に分類することも、自己破産申し立て手続きを通して行う必要があります。
債権者名簿記載漏れの債権が後から見つかったらどうすれば良いの?
債権者名簿に記載漏れが発生した債権が後から見つかることは、本人申し立てを行うと発生しやすい事態として想定出来ます。意図的に隠して債権者一覧表への掲載漏れが発生した場合には、破産免責対象外となるので債務返済義務はそのままです。しかし、うっかり漏れてしまった債権については、債権者から請求があった時点で破産免責決定通知書の控えを債権者へ送付すれば請求がなくなります。