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税務署の過払い金返還請求は債務者本人の同意が必要になる



このごろ、税務署が債務者の滞納している税金を回収するために、債務者のサラ金業者に対する過払い金返還請求権を代位行使するというニュースを耳にすることがあります。確かに、多くの税金は破産によっても免責されず、結局は支払わなければならないものですから、税務署が債務者のかわりにサラ金業者から過払い金を回収してくれるのは、 債務者にとっても有意義であるという見解もあります。

しかし、税金は、実際には何年経過しても支払わなければならないものではなく(五年で時効消滅することも)税金を支払えないような債務者にとっては税金を支払うことよりももっと優先的に必要なお金の使い道がいくらでもあるでしょう。

ですから、過払い金があるという方は、税務署が過払い金を回収してあげますよと、ハイエナのように近づいてくる前に、自分で過払い金の存在に気付いて、ぜひとも弁護士に相談してほしいものです。そして、大切な過払い金は、国や地方自治体のために使うのではなく、自分や家族のために使って欲しいものです。

過払い金返還請求は税務署が即座に代位請求出来るものではない

過払い金返還請求は、租税滞納を行っている債務者本人に対して、過払い金請求を自分で行えないなら税務署が代わりに取り立ててあげるといった甘い言葉により同意してしまう人が少なくありません。しかし、過払い金返還請求は本人が行うものであって、配偶者や相続人といった立場にない税務署が単独で本人の同意なしの行使が出来る性質のものではありません。そこで、税務署はあくまでも直接納税出来ないならば、本人の同意の下で代わりに金融業者から過払い金を取り立てしてくれるというわけです。

一見すると税務署が代わりに過払い金請求してくれるなら、弁護士費用が掛からなくて良いと考えがちですが、滞納している租税額迄の回収しかしない点に注意しなければなりません。弁護士ならば過払い金を全額回収して、経過利息まで請求してくれますが、税務署は滞納している税金さえ回収出来れば良いという考え方で動いています。このため、滞納している租税額が過払い金総額を上回つている場合のみ有効な方法であって、そもそも過払い金額が租税額を上回っている場合には、差額を実質的に放棄している可能性があります。弁護士費用が掛からない代わりに、回収できるはずの過払い金の一部を放棄する可能性があると知れば、誰も税務署に過払い金請求を任せようと考える人はいなくなるでしょう。税務署は、損得部分については聞かれない限り答えないという役所的な考え方で接しているので、あくまでも租税回収業務として過払い金請求の取り立てをしようとしているに過ぎません。

税務署に過払い金請求を代位請求されると損をする

税務署に過払い金請求を代位請求してもらうと、金融業者との間で過払い金請求のやり取りをせずに済むメリットがあります。しかし、税務署が過払い金請求を代位請求する方法は、租税債権に基づき過払い金請求権を差押して代位行使するものです。このため、既に完済済みの過払い金請求ならば個人信用情報機関へ金融事故を起こしたとされる異動情報が記録されることはありませんが、現在も返済中の場合や過払い金と残債を相殺した時にギリギリ完済出来る程度の場合は、任意整理扱いとなりかねません。

例えば、100万円の過払い金があるものの残債が70万円ある場合には、弁護士に依頼して過払い金請求を行うと相殺した30万円に過去から遡った経過利息を加えた金額が回収出来ます。実際には弁護士費用で25%程度掛かるので、手元に戻る過払い金は差し引き数万円という程度に過ぎません。しかし、税務署が過払い金請求を行った結果として、50万円の租税回収を行うために過払い金請求を行うと、税務署は50万円を回収して70万円の残債はそのまま残ってしまい、任意整理を行うだけでなく残債を一括請求されて窮地に陥ります。税務署が過払い金請求を嗅ぎつける前に、自ら弁護士へ依頼して過払い金請求を行っていれば、任意整理にはならずに単なる過払い金請求を行っただけで済むわけです。

税務署が行うのは取立権による差押債権の行使に過ぎない

税務署が行うのは、租税取立権による差押債権の行使に過ぎないので、金融業者にとっては税務署が本人の同意を得て差押債権の回収を行っていると告げられると和解してしまいがちです。過払い金請求訴訟に発展すれば、途中から本人が過払い金請求訴訟に参加して全額回収を目指すことも可能ですが、単独で弁護士を立てて争った方が遥かに回収率が高くなります。税務署は弁護士とは異なり報酬を得て過払い金を全額回収することが目的ではないため、費用は掛からないものの滞納している租税額の回収が最優先事項です。このため、必ずしも全額回収には固執せずに滞納税額が膨大では無い限り、ある程度の回収率で和解に応じてしまいます。

なぜなら、税務署が行うのは差押債権を行使して過払い金請求訴訟を提起するだけであって、裁判を経ずに差押が出来る公権力を使ったものだからです。公務員である税務署の職員は、利益重視の弁護士とは異なり債務者の利益を必ずしも考える必要がありません。結果的に自分で弁護士を立てて過払い金請求訴訟を提起した場合と比較して、回収率・個人信用情報機関への影響共に良い点がほとんど無いわけです。税務署の甘い言葉に乗ると、最終的に損をすることを知っておくと良いでしょう。



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